|
|
|
|
|
|
|
「うっ…」と洗面所に駆け込む女性。鏡に映った自分の顔を見ながら「もしかしたら、妊娠…」とつぶやく。次々に襲ってくるつわり、膨らむおなか…。というありふれたテレビドラマのようなことがわが身にも起こると信じて疑わなかった、自分が妊婦になるまでは。そう、私は妊娠中、吐きもしなければおなかも大して膨らまず、結局4キロしか太らなかったのでした。しかし、このことは大いに私をあわてさせたのであり、思わず書店で『た○ごクラブ』なども手にとって見たくらいで、しかし「太りすぎで困っています」「つわりがなかなか治まりません」などという相談は載っていても、「太らない」「つわりがない」などという相談はどこにも載っていないのであり、ますます不安になったのでありました。それまでは、「十人十色。みんな違って、当たり前!!」などと偉そうにのたまっていたのに、「私ってみんなと違う…」と思うと、とたんに心細くなって、「吐きたい!!太りたい!!」などと、まるで支離滅裂な思いを抱くようになったのでした。 しかし、からだはあまり変化のない私でしたが、こころの変化は意識できて、前から苦手だった「暴力モノ」はもう見るのも聞くのもいや!!というくらい敏感になっていましたし、「母子モノ」には涙腺が弱くなり、ニュースで「今朝、未明○×市で火災があり、この家に住む母親と幼い子ども二人が犠牲になり…」と流れるや、涙があふれて、「ああ、この母親もかつて妊婦だった…」(←当たり前)と思うと嗚咽するくらい泣く私であったわけです。 今考えれば、太らなかった原因は食生活にあり、アトピーであった私は、なるべく和食を心がけ、油モノ・甘いモノは極力避けて「江戸時代の日本人」のような食事を続けていたからだし、つわりがないのはこれは体質としか言いようがなく、ラッキーなことなのでした。(母に聞いたらやはりつわりは軽かったらしい) とはいえ、初めての、しかも三十越しての妊娠だったわけでいろいろ心配、産む場所も大いに悩んだのであります。調べてみると、「ホテルのような個室でリッチに食事、ゴージャスなお産を」という産院から、「産婆さんが来て自宅で出産」というようなものまであり、それまで子どもを産むということすら考えていなかった私には、見るもの聞くもの新しく、はてどうしようかな…と悩んだわけです。ただ、漠然と、「立会い出産がいい」(自分だけ苦しむのはヤだ。原因は二人にあるわけで、相手にも苦しんでもらわなくては――どんなにお産が苦しいものかわかってもらわなければ――不公平だ)、「大病院より個人病院がいい」(丁寧そう)「女性の先生がいい」(やはり知らない異性に「見られる」のは抵抗あります)とは思っていましたので、そうするとすべて条件がそろっているのは「助産院」ということになりました。 電車に乗って家からは少し離れているのですが、よい助産院が見つかり、月に一回の検診が楽しみになりました。なにせ、それまでは近くの大学病院に行っていて、二時間くらい待って診察は五分。しかも、股間を広げてる向こうに看護婦さんとかが平気で通り過ぎていくし、プライバシーのかけらもない。隣の診察室では「産む選択をしない」人の話まで聞こえてくるし…もう、信じらんないっ!! そのうえ、検査、検査で「8000円です」「5000円です」と、まあ金のかかることばかりやる。 それに比べ、助産院は大変よかった。検査は尿検査くらいで、あとはおなかの周りを測るとか…。残りは三十分かけていろいろ話を聞いてくれて、一種のカウンセリングのような感じ。おかげで、「体重は増えなくても、赤ちゃんは栄養を奪い取っていくから心配しないで」「和食のほうがサラサラしたいいおっぱいがでるよ」と、じつに安心する回答をいただき、七人いた助産婦さんともすっかり顔なじみになり、だれに取り上げてもらっても大丈夫だと心強く思った次第。はあーっ、よかった!!てな感じ。 すっかり安定期に入って落ち着き、マイペースで仕事を続けながら、子どもに会える日を心待ちに過ごしていたのですが、またまた予想外の展開が…次号にてお話しましょう。(つづく) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
[an error occurred while processing this directive]
[an error occurred while processing this directive]
[an error occurred while processing this directive]
|