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先月に中旬に一枚の葉書が届いた。 中国山地の山間にある岡山県真庭市勝山町から投函されたもの。 昨年秋に訪ねた勝山のちりめん細工の店の方が送って下さった「第10回勝山お雛祭り」の案内状だ。
勝山には昨年の秋初めてたずねた。 山あいの閑静な町で出雲街道沿いにある。 「街道に後醍醐帝の嘆き見え」はそのとき作った川柳。 デジ俳句を知り撮影対象に飢えていた時の一句。 小学生が国語の時間に五七五をおそわり指折り数えて作句するようなワクワク感を抱いていた。 言葉探しをしながら写真を撮り、ふらりと入ったちりめん細工の店でおしゃべりしたら、ひな祭りがあるのです、ぜひいらして下さい。そうだわ、案内状を出します、ということになり住所をかいておいてきた。
その「勝山のお雛祭りは3月1日から5日まで」開催されている。 勝山の中心部の商店街の店はその家にある雛飾りを外にむけて飾る。 約1キロに亘って展示された店先のお雛様は壮観で、その見物のためこの時期は4,5万人の観光客で賑わう。
テーブルに置いた葉書を見たかたわらの人が「勝山に行きたいのか」と聞いてくれたので「ええ」と返事し日曜日に車ででかけた。 中国山地はまだ雪が残っていた。 車で走ること約1時間で到着した。 勝山は岡山県の真庭市北部にあり、鳥取県の日野町と隣接する。 東京出身の私には「真庭」といえば、群馬県の「真庭」を、「勝山」といえば福井県勝山市を思い当ててしまうので、自宅から80キロくらいで「マニワ、カツヤマ」という地名にたどり着くのは少しばかり違和感がある。 勝山に到着し車を置く場所があるかな?と心配していたら駐車場は旭川の河川敷に臨時駐車場が設けられていて駐車場管理も実行委員会で行われていた。 岡山、兵庫、神戸、なにわナンバーも目立つ。
商店一件ずつに飾られたひな壇を見て歩く。 5段飾り、7段飾り、内裏様だけのもの。 大正時代のものという表示もある。 子どもさんが作ったらしいかわいらしい手作り雛もある。 今どきのお雛様とは違いどこか面長な顔つきの人形も多い。 由緒ある大名家に伝わるお雛様といわれる文化財級の品とは違った庶民のお宅の人形だが、一つ一つに歴史がありそのお宅の思いがあるのだろう。 どの家も工夫をこらした飾り方を工夫している。 青竹をあしらった演出があったり、雛餅がかざられていたり、ヒゲをはやした菅原道真人形と並べるひな壇もある。 デパートや日本人形やさんの店先とはまったく違うアットホームなムードにあふれている。
「ああこれだ、これがいつも言っていた雛人形」 とかたわらの人が言う指先に飾られていたのが御殿雛(ごてんびな)というお雛様。 名前通り御殿に入っている。
見物人の中に実行委員会のメンバーらしき人がおられ、周囲の人に、この御殿雛は・・・と説明していた。 耳をダンボにすると、 「御殿の屋根にしゃちほこが載っているのは男の子用、ないのが女の子用。昭和の初めは男の子の誕生を祝って贈られたのです」 とのこと。
ずっと「兄貴のお雛様は大きくてひな祭りが近づくと蔵から出して組み立てる」「僕のは少し小さいやつ」とお雛様の話しが出るたび彼が話していた。 兄と二人兄弟の男の子の家庭にどうしてお雛様があるのか?「こいのぼりや鎧かぶとを端午の節句に飾るのではないの?」と聞いたが、いや、雛人形もある、ひな祭りに飾るのだと繰り返されていた。 そうだったのか・・・
兄と彼の顔はどこからみても“お公家さん”には見えないのにお雛様を持っているなんて・・・といわなくて良かったと思い返し、一人でそっと笑った。
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