寝台特急出雲は昨年3月に廃止されましたが、廃止前に東京からの帰途二度ほどこのブルートレインを利用したことがありました。 21時10分に東京駅ホームを出発し東海道を京都まで走り、山陰本線に入り、福知山、豊岡を通って日本海側に出て、鳥取には7時58分、米子には9時20分すぎ(いつも確定した時刻ではない、車両の待ち合わせにズレがあったり、天候に左右されたり)に到着します。 途中、大事故を起こした余部鉄橋を通過するのは6時半過ぎで列車の揺れでぼんやり目を覚ます頃です。 正直いってこの寝台特急の乗り心地は絶賛されませんが、東京から出雲市駅までの下り線の旅情は抜群。 北但馬の山々を通り抜けて日本海が見え始めると誰しもがほっとするのではないでしょうか。
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私が好きなポイントは、城崎−香住−鎧の地点。 小さく入り組んだ場所に港があり、冬場はどこもカニの水揚げでにぎわいます。 周辺の旅館は豪華なカニ料理がリーズナブルな価格で並び、山陰本線はカニ料理満喫のお座敷列車も登場します。
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この地点を列車で通過するとき渡るのが余部鉄橋。 1986年の年末、日本海からの強風にあおられ、列車ごと、転覆し、工場・民家をまきこんだ事故が起きたことで有名な橋です。 山陰本線に乗って通過すると当たり前ですがかなりの高所から海を見る感覚しかなく、橋を渡っているより高い場所から海を見ている感じの方が強いです。 この余部鉄橋が付け替えられると聞き訪ねました。
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現地をみれば実際の余部鉄橋は予想以上に高いところを走っていることがわかります。(高さ41m、長さ309m) 橋は山の中から突然現れるように架けられていて、橋脚の長いことは圧巻、鉄橋を囲む山々にマッチしたデザインの上路橋です。その建設が難工事だっただろうことは素人目でもわかります。
橋を背にすれば、日本海に突き出た二つの狭まった半島をみることができ、海風が容赦なく強風になって吹き上がってくることは一目瞭然でした。事故当日は最大風速33m/sの強風だったとのこと。 新聞報道をたどると、人為的な事故原因も重なったこともわかりますが、瞬間に吹く風力の凄さがその地形の荒々しさから発生したことがわかり、JRにも同情したい気分になります。 鉄道に乗れば橋の全容はみえず、全容を見ようとすれば車で国道178号線を走らなければなりません。 鉄道マニアが撮影するカーブした地点で橋と車両と景色を同時にフレームに入れた写真など撮れそうもありません。 現在より7メートル内陸に付け替え工事が計画されている今の時期、ライトアップもされるようです。工事が始まれば臨時展望台もなくなるそうです。
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鎧駅は今観光スポットになっていて、香住駅からバスが走り、駅前は大型車両まで止められる駐車場ができていました。 時刻表を確認して現地に到着しませんでしたが、駅前付近に駐車して写真を撮るとかなりの人もいて、もしや列車が通過するのかと期待をしたところ走行がありました。 ラッキーでした。
首が痛くなるほど見上げた鉄橋をあとにしてこの後、城崎温泉に向いました。 日本有数の名湯は明治の文豪志賀直哉の「城崎にて」の舞台。
でかけて初めて知ったことは、志賀直哉は事故に合い城崎に投宿し、温泉で傷を癒したということ・・・ 死亡事故のあった余部鉄橋 事故後の療養をした城崎温泉
山陰には命の尊さを示す物語がある・・・そんな気持ちで、旅をしました。
u子の山陰便り9月は城崎ではなく「米子にて」です(^o^)。
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