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世田谷パブリックシアター「ロマンス」。 井上ひさし書下ろしのこまつ座&シスカンパニー公演。 井上&栗山民也コンビだから、安心して鑑賞&満足。
チェーホフの創作者としての生涯を描いている。 それがかなり面白い構成で、青年期から晩年までのチェーホフを4人が演じ分けるんだけど、登場人物はこの4人を含め、わずか6人。 一人につき各場面で少なくとも4役以上を演じるわけ。
キャストもなかなか。木場勝己、段田安則、生瀬勝久、大竹しのぶ、松たか子、そして、若手ミュージカル俳優の注目株井上芳雄(芸大出)。 しのぶは例によって、チェーホフの妻のオリガ役でたか子よりうんと年下(!)をやるかと思えば、貧しい農奴の婆さんをずうずうしく演じ切って、イヤになるくらいうまい。 藤山直美ばり(この数日前、明治座で観たもんだから)。 松たか子は、チェーホフの妹のマリヤ役で、生涯ほぼ一本化。 この人は、案外いまの演劇界にはだいじかもしれない。こういう場合に。 ほかの手練がくるくる演じ分けるとき、わりかし安定して軸をつくれる。 個人的には好きじゃないけど、やっぱり血は争えない感じ。 そして、男たちの、まあ、楽しそうなこと。
井上さんの本は、本当に言葉がきれいで(ロシア語ではない)、説得力があって、しかも端的で力強い。 場面場面で言うべきことがきっちりと、バリバリ自然体で散りばめられている。 言葉にムダがないから、演出にも無理がない。 もちろん歌アリだけど、それもまったく邪魔にならない(てことはミュージカルじゃない)。
テーマの根底が、「チェーホフはボードヴィルを書いたつもり」というものだから(怒ってるよー、スタニスラフスキーにもモスクワ芸術座にも)、人生のペーソスっていうか、バカバカしさっていうか、そんなのが根幹になっていて、井上さんの世界とまさにリンクしている。 「かもめ」だの「桜の園」だの「三人姉妹」だのの馴染みのあるセリフも、あ、なんだ、そういう意味だったのか、と、井上さんの言葉で知らされる。 物心ついてから、ほぼ初めてふつうの芝居(四季でも東宝でも松竹でもなく)を見る娘には、ちょうどよかったかもしれない。 けど、前に見た栗山さんの「桜の園」も確かに雰囲気劇だったな。
役者も本もどうなるんだかわからないワクワクを期待するのも、それなりにギャンブルっぽくていいんだけど、本も演出も役者も揃っている芝居の安心感には代えがたいものがある。 でもって、見たあと、その役割がきっちり果たされるというのが、なんとも心地よい安堵感。 あー、よかった。 また行こう、と次につづく。
まぁ、前の週に見た明治座の「妻をめとらば」もね、それなりに安心感はあります。 こちらは意外性皆無の豪華な顔ぶれ。 ていうか、主に香川照之と直美なんだけど。 脚本がマキノノゾミで、多少、別の期待もあったけど、もう、明治座にあってしかるべきアドリブ連発。 型通りのままのクスクス笑い。 座長にならって役者も脱力の楽しみ。
ま、親孝行観劇ってことで。
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